突然死を起こす猫のフィラリア症

犬の飼い主様は春になると動物病院で狂犬病ワクチンとフィラリア検査を実施し問題なければフィラリア予防を蚊がいなくなるまで実施するのが一般的です。それはフィラリア予防せずにフィラリア感染をしている蚊に刺されるとフィラリアが犬の心臓に寄生し発咳や運動不耐性や失神などの心不全症状を引き起こしてしまうので予防が必要なのです。都内では室内飼いが多いことと飼い主様の中でフィラリアのことを知らない人はいないので予防が進みフィラリア感染している犬を診察することは少なくなってきました。

しかしながら猫の飼い主様はあまりフィラリア予防を実施している方は少ないのが現状です。それはフィラリアによる症状がわかりにくいのが原因と言われています。フィラリアは犬の体内では繁殖に適した環境のため感染後に心臓に寄生するフィラリアの数は数十匹にもなり激しい症状が出ます。反対に猫はフィラリアが体内で繁殖に適さない環境のためフィラリアが犬のように増殖することはなくせいぜい数匹程度が肺動脈内に寄生します。そのため症状がない、もしくは軽度な咳だけの場合が多く見過ごされることが多いのです。

フィラリアに感染した猫は感染当初は軽度な症状のことが多いのですが、問題は突然死を起こすことがあることです。それはフィラリアがアレルギー反応を引き起こしたり、死滅したフィラリア虫体が肺動脈に塞栓を起こすことが原因とされています。飼い主様から家に帰ったら先程まで元気だった猫が亡くなっていたというご連絡がまれにありますが、多くの場合、フィラリア症もしくは心筋症で亡くなったのだろうと考えられます。

最近の研究結果によればフィラリアに感染している猫はおよそ10％程度という報告もありますので猫の病気の中でも注意が必要でしょう。

当院は板橋区の夜間救急対応動物病院なのですが、夜間救急で対応させていただく猫ちゃんの中には急な呼吸困難を起こして来院されることも多いのが現状です。心筋症の場合は心臓エコー検査で診断することも可能ですが、フィラリア症は犬で行う犬糸状虫抗原検査で陽性反応になる症例は少なく診断が難しい疾患の一つです。

また、治療法も確立していないので治療が難しく酸素吸入や肺炎の治療など対症療法が治療の中心になり、回復の難しい病気でもあります。飼い主様にもフィラリア症のご説明をすると犬の病気だと思っていたり知らなかったというお声をよく聞きます。

室内飼いでも発生が確認されていますので、家猫だから安心というわけではありません。フィラリア症は予防で完全に防げる病気ですので、蚊のいる時期（地域によって異なりますが東京ではおよそ5－11月、）には予防をすることをお勧めします。

フィラリア予防薬は猫の場合滴下タイプのものが主流です。背中に垂らすだけで予防が可能なものなので初めてでも簡単に塗布できます。また同時にノミや消化管寄生虫などの駆除や予防もできますので蚊の発生する時期には1か月に1回の予防は実施しましょう。

フィラリア予防に関しての詳細に知りたい方やご質問のある飼い主様は上板橋、常盤台（ときわ台）の動物病院である上板橋リズ犬猫病院に是非ご相談ください。