先日高齢猫ちゃんの便秘で他院で便秘用ご飯に変更して1年以上経過しているが便秘が改善しないとのことで飼い主様が来院されました。便秘に対しては食事の対処とあまりにも出ないときは便の掻き出しを行っていたようです。腎不全も丁度そのころ発覚していたようですが軽度だったため経過観察となっていました。飼い主様のお話としてお水もいっぱい飲むのに便秘になってしまい困っているとのことでした。さて何が問題なのでしょうか?また飼い主様はご存じなかったのですが便の掻き出しはリスクのある治療になりますのでご説明させていただきます。
便秘は犬ではあまり問題になることはありませんが、猫ちゃんでは1日1回排便していない子は注意が必要です。便秘は排便困難だけでなく食欲不振、嘔吐や敗血症を引き起こすことがあり、最悪の場合死に至ることもある怖い病気なので人のように安易に考えてはいけません。また近年では猫の便秘用の画期的な療法食が出ていますので単純な便秘であれば問題になることも少なくなってきました。もちろん今回の猫ちゃんでも使用されていましたがなぜ便秘は改善しなかったのでしょうか?
まず、飼い主様が別々のこととして認識していた便秘、腎不全、多飲は密接な関係があります。腎不全では腎臓から排出される尿(水分)が正常な猫よりも多くなっています。そのため体内の水分が足らなくなるため飲水量が増えてしまうのです。しかし飲水には限界もあります。それでも腎臓から排出される水分は多いため消化管の中にある便の水分が腎臓から排出されてしまうのです。そのため便は水分がなくなり硬くなり排便困難になってしまうのです。消化管の中でも結腸は水分を吸収することが多いのですがそこから水分が吸収されるので結腸に便が溜まります。便秘も腎不全の初期に対処できればよいのですが、経過が長いと巨大結腸症という状態に陥ります。便が溜まりすぎると結腸の機能不全が起きてしまうのです。
猫の便秘には便秘用の療法食がよいのですが、実は腎不全からきている便秘にはまずは腎臓用療法食と水分補給(飲水や皮下点滴)が重要です。
今回の猫ちゃんでは便秘の初期であれば腎不全用療法食と水分の摂取が主な治療になっていたと思います。しかし治療経過が長いため巨大結腸になっていますので便秘用の療法食と水分補給、また便軟化剤が適応になると思います。
また時々行っていた便の掻き出しですが実は危険な処置になります。硬くなった便は石のような硬さになりますので便を掻き出す際にその便が腸の壁を傷つけてしまいそこから細菌が侵入しやすくなります。最悪の場合死に至ることもあるので注意が必要です。便の掻き出しは当院でも実施していますがリスクをご説明し、鎮静下で点滴や抗生剤を使用し注意しながら行っています。
猫の便秘は危険な病気になりますので初期に治療がうまく行かないと一生涯継続的な投薬や便の掻き出しが必要になります。猫の便秘は実はそれほど怖い病気なのです。
ちなみに今回セカンドオピニオンで来院された猫ちゃんですが現在は自宅での皮下点滴と便秘用ごはん、便軟化剤で便も毎日出るようになり飼い主様も大変満足されています。
セカンドオピニオンに関してお困りの飼い主様は上板橋、常盤台(ときわ台)の動物病院である上板橋リズ犬猫病院に是非ご相談ください。